塩村は、本日6月7日(金)の本会議で「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案」(こども性暴力防止法案・日本版DBS)について、立憲民主・社民会派を代表して質問を行いました。
本会議での質問は、昨年4月の「フリーランス適正化法案」の質問以来の本会議登壇になります。
以下、塩村の質問全文及び各大臣からの答弁です。
塩村あやか
立憲民主・社民の塩村あやかです。ただいま議題となりました法律案について、会派を代表して質問いたします。
性犯罪は「魂の殺人」といわれます。それは、性暴力が、被害者の権利を著しく侵害し、被害者の心身に生涯にわたって回復し難い重大な影響を与えるものであるからです。特にそれが、こどもに向けられたものであるならば、その影響は計り知れず、断じて許されるものではありません。我が国を含め、世界で約200の国と地域が締約国となっている「児童の権利に関する条約」にも、「あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から児童を保護することを約束する。」と明記されています。
このような中、昨年3月、旧ジャニーズ事務所の元社長による所属タレントへの性加害の報道は、世界を激震させました。昨年の夏には「国連ビジネスと人権の作業部会」による訪日調査が行われ、先日、報告書が公表されました。同報告書では、本事案について「引き続き深い憂慮を抱いている」と言及されているほか、我が国における様々な人権問題を指摘した上で、政府から独立した国内人権機関の設立が勧告されています。重大な性加害事案に国としてどのように対応するのか、被害者の方が、そして世界が注目しています。
旧ジャニーズ事務所の元社長による性加害問題を含め、我が国の人権問題について国連機関から勧告を受けている状況を、政府としてどのように受け止めていますか。林官房長官に伺います。
我が国の人権問題への取組について海外から不信感を持たれていることと、岸田総理肝いりとされた「国際人権問題担当」の首相補佐官ポストが2年足らずで消滅したことは無関係ではないはずです。我が国が人権先進国であるために、国連機関が勧告する独立した国内人権機関を設立すべきと考えますが、林官房長官の見解を伺います。
立憲民主党は、令和3年4月、こどもたちを性犯罪被害から守るための基本的考え方を取りまとめました。第一に、こどもに関わる全ての職種を対象として対策を行うこと。第二に、再犯防止の観点から、過去にこどもに対するわいせつ行為をした者を、原則として、二度とこどもに関わる職に就かせないようにすること。これが我々の基本的な考え方です。
本法律案は、我々が求めてきた日本版DBS制度を創設するものですが、この基本的な考え方に照らせば、こどもたちを本当に性被害から守ることができるのか、懸念が拭えません。政府においては、そうした懸念を払拭し、国民の皆様が安心できるよう分かりやすい答弁をお願いし、以下質問いたします。
まず、本法律案の大きな問題点は、あらゆる事項が内閣府令やガイドラインで定めるとされ、事実上の白紙委任となっている点です。対象事業や従事者の範囲、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めるときの判断基準など例を挙げればきりがありません。衆議院の審議で政府は、ガイドラインで示すとの答弁を繰り返しましたが、そのように言う以上、本法律案の実効性を確実に担保できる内容とすることを求めます。その上で、このガイドラインの策定までのスケジュールと策定協議に参加するメンバーの人選について、加藤大臣に方針を伺います。
また、策定に当たっては、性被害当事者やこどもの意見も取り入れるべきと考えますが、この点について、加藤大臣に見解を伺います。
次に、対象事業の範囲について伺います。本法律案では、学校設置者等は義務化の対象となる一方、学習塾、スポーツクラブ等は認定制度の対象となります。このため、児童生徒等へのわいせつ行為により職を追われた教師等が、認定外の学習塾で働いたり、個人塾を経営したりする、いわば抜け穴が残された制度となっています。このような制度とした理由について、政府は、事業者の対象範囲が不明確で監督や制裁の仕組みが必ずしも整っていない場合があるとしていますが、それは行政側の理屈であり、本法律案の実効性は確保できないのではないでしょうか。
事実、大手学習塾の運営会社50社に行ったアンケートでは、学習塾が任意の認定制度の対象となることに「反対」した企業が15社あり、その理由として、学校と学習塾を区別する必要はないことが挙げられるなど、義務化を求める声が目立ったとの報道があります。現場の声を聞かず、行政側の理屈で制度設計したがゆえに、このようなアンケート結果となったのではないですか。学習塾から義務化の要望がある点について、政府はどのように捉えているのか、加藤大臣に伺います。
また、学習塾を含め、義務化のニーズがある事業分野については、事業者からの意見を踏まえた上で、認定制度から義務化の対象に切り替えることも検討すべきと考えますが、加藤大臣に政府の見解を伺います。
本法律の対象外となる個人塾や個人音楽教室からは、認定制度の対象にしてほしいとの声も聞きます。実際は認定制度の対象外であるにもかかわらず、性犯罪歴のない、ひたむきに個人事業を営む方々が、「性犯罪者なのではないか」というあらぬ誤解を受け、顧客が離れ、事業の継続が困難になる可能性があるからです。このような懸念について、政府においてどのような議論が行われたのでしょうか。加藤大臣、お答えください。
また、こうした個人事業には、希望する正規の職に就けず、結果としてフリーランスや個人事業主といった就業形態を選ばざるを得なかった、就職氷河期世代の方々も多く含まれます。岸田総理は、就職氷河期世代の経済的不安定さは少子化の要因の一つであるとして両課題の関連性を初めて認め、「重く受け止めなくてはならない」と答弁されたばかりですが、そうであるならば、真面目に事業を営む個人事業主の方々が不当に淘汰されるリスクがあることも重く受け止める必要があるのではないですか。本法律案には施行後3年後の見直しが規定されていますが、それを待たず、必要に応じて実効性のある対策を打つことが重要と考えますが、政府の見解と、とり得る施策について、加藤大臣にお伺いします。
次に、確認対象とする性犯罪歴の範囲について伺います。本法律案の確認対象となる特定性犯罪には、不同意わいせつ等の刑法犯のほか、痴漢や盗撮等の条例違反が含まれる一方、下着泥棒やストーカー規制法違反は含まれていません。この点、下着泥棒やストーカー規制法違反を確認対象に含めることを求めるネット署名が約32,000筆も集まり、こども家庭庁に提出されています。これが性被害当事者の、国民の声なのではないですか。3万筆を超えるネット署名について、加藤大臣はどのように受け止め、また今後どのように対応すべきと考えているか、お答えください。
同様の事例として、衣服や所有物に体液をかけた疑いで逮捕される事案は、器物損壊罪等として処理されるケースがあると承知していますが、こうした事例も性犯罪歴の確認対象に含まれません。その理由について、政府は、特定の犯罪の一部だけを抜き出して対象とすることは難しいと述べています。そうであるならば、刑法を改正するなどにより、体液をかけたという行為を性犯罪として捉えられるようにし、かかる行為を特定性犯罪に含めるとの対応をとるべきではないですか。体液をかけるという行為を刑法上に位置付けた上で、それを特定性犯罪に含める必要性について、加藤大臣の見解を伺います。
次に、犯罪事実確認書の交付について伺います。犯罪事実確認の結果、犯歴ありとされた場合、その回答内容はまず対象業務従事予定者本人に通知されます。他方、個人の犯歴は、個人情報保護法上、たとえ本人でも開示請求できない個人情報とされています。媒体が何であれ、犯罪事実確認書が本人の手元に残るとすれば個人情報保護法との関係で疑義が生じるのではないかと考えますが、この点について加藤大臣の見解を伺います。
また、これを踏まえ、犯罪事実確認書の交付は実際にどのような形で行うことを想定しているのか、加藤大臣の答弁を求めます。
こうした疑義が生じるのは、そもそも犯罪事実確認書が政府の外部に出る制度設計になっているからにほかなりません。この点、イギリスでは、ベビーシッターやチャイルドマインダーが、Ofsted(オフステッド)と呼ばれる第三者機関への登録が義務付けられ、その際、英国DBSによる犯罪歴チェックを受ける仕組みがあると聞きます。事業者が登録されたベビーシッター等を採用するようにすれば、犯罪歴が外部に出ることもなくなり、個人事業主への適用も可能となると考えます。こうした仕組みの導入について、加藤大臣は、「個人からの登録申請の一つ一つについて、その申請の当否を確認しなければならないこととなり、膨大な人手や手間を要する」と答弁されていますが、政府を挙げてDXやAIを活用した省力化・省人化を進める今日、作業が膨大だからという理由で手を付けないのは納得がいきません。こどもを守る覚悟が足りないのではないですか。改めて、こうした仕組みを我が国で導入することについて、加藤大臣の見解を伺います。
本法案によって、ようやく、18歳未満のこどもたちを性犯罪から守る対策が一歩前進するとの期待を持つことができます。他方、我が国では、18歳になると、まるで子羊がオオカミの檻の中に入れられるような社会に突如放り出される実態があることも忘れてはなりません。実際、性的グルーミングなどで手なずけられて被害に遭うケース、パパ活売春、児童ポルノ、アダルトビデオ出演被害など事例は後を絶ちません。この背景の一つに、学校現場における性に関する包括的な知識を得る機会の不足があると言われています。
この点、我が国の小中学校の学習指導要領では、全ての生徒に共通して指導する内容として妊娠の経過は取り扱わないとする、いわゆる「歯止め規定」があるために、こどもたちが性被害を認識できないなどの深刻な影響を受けていることが指摘されています。性教育により「寝た子を起こす」と揶揄されることがありますが、適切な性教育を行うことで早熟な性体験を遅らせる結果になったことが多くの研究により証明されているほか、ユネスコなどが2009年に策定した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、「包括的性教育」という用語が使われ、「ジェンダー」「暴力と安全確保」など8つのコンセプトに基づく性教育が提唱されています。
我が国が「歯止め規定」を設ける理由について、政府は、児童生徒、保護者、教職員が持つ性に対する考え方が多様であること等を挙げていますが、だからといって、国際機関が15年前に策定した国際的な基準を下回る性教育を実施してよいことにはなりません。むしろ、教育現場において包括的性教育がなされていない中で、子供達はネット情報やアダルトコンテンツから誤った知識を得てしまい、18歳になると同時に、まるで「性被害は自己責任」としてしまうような仕組みになっていることこそ問題があるのではないでしょうか。
こども・若者の性被害を防止するため、教育現場において男女が共に包括的性教育を学ぶことが重要と考えますが、この点について、盛山文部科学大臣の見解を伺います。
最後に悪質ホスト問題で顕著である、マインドコントロールによる若年女性の性被害について伺います。大学生のみならず、中高生にまで被害が生じている悪質ホストなどによる性搾取は悪質化の一途をたどっており、支援団体によると「大学生の娘の行方が分からない」との相談が相次ぎ、少なくともその支援団体だけでも今現在50人が行方不明、全体では数百人に上っているのではないかということです。少なくない女性が海外売春に駆り出され、アメリカや韓国などで日本人女性が売春で検挙される事例も相次いでおり、人身売買議定書にも抵触、深刻度を増しています。こうした問題・実態を政府としてどのように受け止めているか、林官房長官に伺います。
また、国会質疑で私がこの問題を指摘してから早7か月が経過しますが、被害は深刻度を増し、海外にまで拡大しています。本問題に対する責任をどう感じているか、松村国家公安委員長に伺います。
悪質ホスト問題の根本的解決には、被害者のマインドコントロールからの解放が重要です。マインドコントロールされている状態では、自分自身で適切な判断を下すことが困難であるため、医療の介入も必要と考えますが、メンタルヘルス対策の観点から、厚生労働省においてとり得る施策はあるのでしょうか。先般、被害者の方々と面会された武見厚生労働大臣に、面会時に感じた思いと併せて、お伺いします。
先の内閣委員会で松村国家公安委員長は、被害者やその家族との面会について「予定を調整する」旨答弁されました。被害者や家族の方々は松村国家公安委員会委員長との面会も心待ちにされています。その調整状況を松村国家公安委員長に伺います。
先ほど、私たち立憲民主党は、悪質ホスト被害防止法案を衆議院に提出いたしました。皆様に応援をいただけましたら、本当に嬉しく思います。
日本のこども・若者が性搾取や性暴力により未来を奪われることがないよう尽くしていく責務は、この議場にいる全員にあると申し上げ質問を終わります。
加藤鮎子内閣府特命担当大臣
ガイドラインの策定についてお尋ねがありました。具体的なスケジュールや策定方法については、現時点で決まっているものではありませんが、策定時期については、対象事業者の準備期間にも十分配慮した上で、施行期日前になるべく早く整備し、周知を徹底してまいります。その策定に当たっては、関係団体や現場の声も踏まえた実効的なものとなるよう、対象事業の所管省庁等のご協力も得て検討するとともに、当事者である子どもたちの意見も聞いた上で進めてまいりたいと考えております。
民間教育事業者の認定についてお尋ねがありました。本法案の取りまとめにあたっては、学習塾の関係団体からもヒアリングを実施するなど、現場の意見をお伺いしつつ、制度設計の検討を進めてまいりました。その上で、学校や認可保育施設など、特に公的関与の度合いが高い認可等を受けた事業者は、その認可等を受けるにあたり、個別法において定められた運営・体制等の基準を満たしていることから、この法律案に基づく措置を直接義務化しても対応できるものと考えたところです。他方、学習塾等などの民間事業者は、法令上運営・体制等の基準がないため、この法律に基づき、学校等が講じる措置と同等のものを実施する体制が確保されていることなど、個別に認定する仕組みを設けることで、できるだけ広く対象に含められるようにしました。民間教育業界から、制度への参加を強く希望する声が既に表明されていることも承知しております。こうした関係業界団体とも連携しながら、多くの対象事業者に認定制度に参画いただけるよう、強く働きかけてまいります。
個人事業を営む者が認定されないことにより、誤解が生じる懸念についてお尋ねがありました。純粋に個人が1人だけで業務を行っている形態の事業については、従業員の勤習や相談窓口の設置といった措置を事業者が講じることが通常困難であることや、事業者がその犯罪歴を取得することができてしまうと、対象事業とは無関係の第三者から犯罪歴の提出を求められるなどの対象事業以外のところで、その犯罪歴を悪用される恐れがあることから、本法律案の認定対象とすることは困難であると考えています。その上で、ご指摘のように、認定対象外の事業者が誤解されないように工夫することは重要であり、認定を取得していないからといって誤解を生じさせることがないように、本認定制度の趣旨や範囲等についてしっかりと周知を行ってまいります。
個人事業を営む方々に対する対応策についてお尋ねがありました。今年度、新たに取りまとめた総合的対策において、教育保育業界における児童への性暴力防止の取組を横断的に促進するための指針のひな形や事例集について、令和6年度中に作成することを盛り込んでおります。法案の対象とならない個人が一人で行っている事業者においても、こうしたものを活用いただくことで、児童への性暴力防止に寄与することが可能になるとともに、それを対外的に説明することにより、保護者等の理解を得ていくことも可能になると考えております。
確認対象犯罪に関するネット署名についてお尋ねがありました。ご指摘のネット署名については受け取らせていただき、その重みを実感いたしました。本法律案の確認対象犯罪に下着窃盗やストーカー規定法違反の罪を含めるべきというご意見について、性的動機をもって人の尊厳を傷つけるような行為を、可能な限り広く対象としたいという思いは私も共有いたします一方、下着窃盗やストーカー規制法違反の行為を対象確認とすることについては、性的な動機を裁判所が一般的に認定するわけではないことや、特定の犯罪の一部の行為だけを抜き出して対象にすることは、対象の行為であることを誰が判断し、その判断の正しさをどのように担保するか、といった様々な検討すべき課題があります。いずれにしましても、確認対象犯罪の拡大については、この法律の施行の状況等を勘案しつつ、これらの課題を踏まえ検討する必要があると認識をしております。
判歴確認の対象となる性犯罪についてお尋ねがあります。確認対象となる性犯罪歴を有するということは、そのものが対象業務に従事することを事実上制限することになるため、その根拠は正確な事実でなければならず、本法案では厳格な手続きに基づき、裁判所が事実認定をした前科を確認の対象としています。特定の犯罪の一部の行為だけを抜き出して対象にすることは、対象の行為であることを誰が判断するのか等の課題があります。法務省の所管ではありますが、ご指摘のような行為を刑法上の性犯罪として位置づけるかどうかについては、具体的な状況・対応等を問わず、一律に性犯罪とすることが適当か、性犯罪とすべき行為を明確に過不足なく規定することができるのか等について、慎重な検討を要するものと承知をしています。まずは、本制度の円滑な実施に万全を尽くしてまいります。その上で、確認対象犯罪の拡大については、今後の施行状況を勘案しつつ、これらの課題を踏まえ検討する必要があると認識しています。
犯罪事実確認書の事前通知と個人情報保護法との関係、その交付方法についてお尋ねがありました。犯罪事実確認書の内容の本人への事前通知は、犯歴がある場合のみ行われるもので、犯歴がない旨の書面等があるわけではありません。そのため、第三者が本人に犯歴がない旨の書面等の提出を求め、犯歴の有無を把握することはできないことから、個人情報保護法第124条との関係でも疑義は生じないものと考えています。また本人への事前通知方法や事業者への交付方法については、今後、情報セキュリティの専門家や関係機関の意見もお聞きしながら検討してまいりますが、例えば、本人の氏名等の情報を本人や事業者しか知り得ない申請番号等を持って記載することで、万が一漏えいした場合でも、容易に本人と結びつけられないようにするなど、個人情報保護を徹底する工夫を行ってまいります。
オフステッドへの登録の仕組みの導入についてお尋ねがありました。個人が登録できる仕組みとして、仮に犯罪歴がなければ登録されるというものだとすれば、それは前科の有無を公にするに等しいことになります。また、仮にその職にふさわしいことを表す要件の一つとして犯罪歴がないことを求め、審査を経た上で登録するという仕組みを指しているとすれば、現在資格制度がない業種も含め、どのような要件がその職にふさわしいものとして必要と考えるか、考えられるのかなどの課題があります。イギリスのオフステッドは、教育保育等の事業者の総合的な質を担保するための仕組みで、職員体制は数千人規模であり、こうした質の監査という新たな役割を有する組織を我が国において直ちに構築することには様々な課題があります。まずは本制度の確実な実施に万全を尽くしてまいります。その上で制度のあり方については、今後の施行状況を踏まえ、引き続き検討をしてまいります。
林芳正内閣官房長官
人権問題についての韓国への受け止めについてお尋ねがありました。国連人権理事会の特別手続きの一つであるビジネスと人権作業部会を含む専門家は、個人の資格においてその任務を果たすものとされており、作業部会等による勧告は法的拘束力を有するものではありませんが、我が国としては、関係省庁において勧告の内容を十分に検討し、必要に応じ適切に対応してまいりたいと考えております。いずれにせよ、人権擁護は全ての国の基本的な責務であり、我が国としてはビジネスと人権の分野も含め、今後とも人権尊重の取り組みを重視して進めてまいります。
政府から、独立した国内人権機関の設置についてお尋ねがありました。人権救済制度の在り方については、これまでなされてきた議論の状況も踏まえ、法務省において不断に検討していると承知をしております。近年、いわゆる障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、ブラック差別解消推進法などの個別法が制定されているところであり、差別のない社会の実現のため、まずはこれらの法律に基づき、きめ細かな人権救済を推進してまいりたいと考えております。
日本人女性の海外売春の問題に関する認識についてお尋ねがありました。いわゆるホストクラブの利用客の高額料金によるものをはじめ、借金返済のために売春させられるといった事例については、人身取引議定書に定める、人身取引に該当し得る、深刻な犯罪であると認識しております。こうした認識の下、海外での売春を斡旋する行為も含め、捜査機関による違法行為の取締りを強化しているほか、関係機関が連携して相談への対応を強化するなどの取組も進めているものと承知をしております。
盛山正仁文部科学大臣
教育現場において、男女がともに包括的性教育を学ぶことについてお尋ねがありました。学校における性に関する指導にあたっては、児童生徒間で発達の段階の差異が大きいことなどから、全ての児童生徒に共通に指導する内容と、個別に指導する内容とを区別して指導することとしています。こうした中、全ての児童生徒に共通に指導する内容としては、妊娠の経過は取り扱わないこととしており、各学校においては、学習指導要領に基づいて、発達段階に応じ、受精・妊娠・性感染症の予防などの身体的側面のみならず、異性の尊重・性情報への適切な対処など、様々な観点から指導を行うこととしております。また、これに加えて、個々の児童生徒の状況等に応じ、必要な個別指導が行われることが重要と考えており、文部科学省においては、各学校における指導・相談体制の充実を図っているところです。引き続き、児童生徒が性に関して正しく理解し適切な行動が取れるよう、着実な指導に努めてまいります。
松村祥史国家公安委員会委員長
悪質なホストクラブに関してお尋ねがありました。警察では、これまでも多くの都道府県警察において、様々な法令を駆使して、ホストクラブやその従業員の違法行為を取り締まっており、また、違法行為がホストクラブの営業に関して行われている場合は、風営適正化法に基づく営業の取り消しや停止といった厳正な行政処分を行っているところであります。また、海外への売春を斡旋していたグループを検挙し、こうした問題について社会に広く警鐘を鳴らしたところです。一方、女性が売春に至る背景には、さまざまなことが考えられるため、警察による違法行為の取り締まりに加え、関係機関が連携して、女性の支援のための取り組みを行っていくことが重要と考えています。
面会についてご質問がありました。被害を受けられた女性ご本人、ご家族からは、警察署の担当者がこれまでも貴重なお話を伺っており、このことはしっかりと報告を受けております。現時点では調整に至っておりませんが、私としては、こうした報告を受ける中で、悪質なホストクラブについて強い問題意識を持っており、まずは厳正な取締りを引き続き行うよう警察を指導しているところであります。
武見敬三厚生労働大臣
悪質ホストクラブの被害者に対するメンタルヘルス対策などについてお尋ねがありました。悪質ホストクラブの被害者の方々とは、ご家族を含め先月面会をし、その中で、女性が多額の借金を負わされ賠償を強要されていることなどの実態をお伺いし、事態の深刻さを改めて痛感をいたしました。面会を通じて、こうした被害のあわれた方々の支援のために、心のケアの専門機関と連携することの重要性を改めて認識をし、相談窓口である女性相談支援センターと精神保険福祉センターの連携を推進するなど、相談体制の強化等を図ることとしております。厚生労働省としては、引き続き、この民間団体、関係機関、関係省庁と連携しながら、悪質ホストクラブ対策にしっかりと徹底的に取り組みます。