「AV出演被害防止・救済法案」参議院内閣委員会で全会一致で可決!

 本日の内閣委員会は二階建て。後半は「AV出演被害防止・救済法案」について質疑しました。

 塩村あやかの質問は「1:46:30」からです。

【AV出演被害防止・救済法案】

 以下、質疑の内容です。
【問1】今回、立法趣旨とも異なる本来別法となる反対意見が多かったことから、次回のこうした混乱を防ぐためにも、所謂「守備範囲」を確認しておきたい。附則第4条では2年以内の法の見直しが書かれているが、次回の改正時に本法案に性行為を伴うAVそのものを禁止することを規律する議論をする場合、本法案の趣旨とも整合しないのではないか。
【答】本法案は、AV出演被害を防止し、被害者を救済することを目的とするものであり、「性行為に係る人の姿態を撮影したAV」に関する契約を規律の対象として、その出演契約の効力を制限するための特則や差止請求等を規定しているものであり、他の法律で違法・無効なものについてこれをいささかも変更するようなものではない。 その上で、本法律の中で、例えば、「性行為に係る人の姿態を撮影したAV」に関する契約の特則などの規定を定めつつ、それ自体を禁止する規定を法律に盛り込むことは、整合性を図ることが困難であり、解釈に困難をきたすおそれがあるのではないかと考えている。

【問2】AVサイトには、カリビアンコムやFC2などの海外配信プラットフォームが、海外のサーバにアップロードしたAVについては、対応が難しいのではという意見があるがどうか。 また、契約締結や、撮影、撮影をしたAVのアップロードを全て海外でしている場合はどうか。
【答】まず、海外サーバにアップロードされた場合の公表の差止めに本法が適用されるかという問題は、準拠法の選択の問題である。 最終的には個別事情による判断となり一概にはお答えできないが、海外サーバにアップロードされても、そのことのみをもって直ちに本法の適用が排除されるものではなく、日本法が準拠法とされ、本法が適用されれば、第15条による差止請求の対応が考えられる。 本法第15条では、制作公表者から出演者に、当該AVの公表を行っている者に関する情報提供をさせるなど、出演者の差止請求に必要な協力をすることを定めており、差止請求権を行使しやすくする工夫をしている。 さらに、海外サーバから配信されているものである場合、出演者による契約解除の事実を了知したプロバイダ等が利用規約等に基づき当該情報を削除等する対応も考えられる。
 次に、契約締結、撮影、アップロードなどを全て海外で行っている場合についても、最終的には個別事情による判断となり、一概にはお答えできないが、日本語で制作されるなど、主として日本向けに発信され、閲覧者の多くが日本人であるなどの場合には、その差止請求の可否等について、日本法が準拠法とされ、本法第15条が適用されることもあり得ると考えられる。一般に、当該制作公表行為と日本との関係が密接であればあるほど、日本法が準拠法とされる可能性は高くなると考えられる。 また、現在、各国においても、各プラットフォームが権利侵害情報であれば削除できるとする規定を置いている例があり、また、各プラットフォームの利用規約等において権利侵害情報の削除について定めていることが多いことから、日本国内で権利侵害になっていることが明確になったものについては、このような規約等に基づいて一定程度対応される可能性もある。
 なお、海外のウェブサイト等の場合には、対応に一定の困難もあり得ることから、本法案成立後に定められる予定の内閣府令においては、契約前に出演者に説明する事項として、AVを配信するウェブサイト等を運営する者の所属地の国名等を明示して説明させることを規定することが想定されている。これは、AVの公表方法について、事前に出演者が知ることができるようにしておくことが望ましいとの考え方によるところ、AVの公表方法が出演者の意に沿わない場合には、もとより、そういった契約を締結する必要はないものである。

【問3】本法案は、出演契約の解除等につき定めるものであるところ、出演者が契約を解除すると、著作権がなくなり、その結果、海外も含めて著作権による侵害対応ができなくなるのではないか、との心配の声があるが、著作権や著作隣接権はなくなるのか。
【答】著作権や著作隣接権は、著作物を創作する行為や演じる行為等があれば自動的に付与される権利であり、契約に基づいて発生するものではないことから、出演に関する契約を締結する行為自体は、著作権や著作隣接権の発生とは関係がない。 したがって、制作された性行為映像制作物が著作物に該当する場合や出演者の実演に著作隣接権が発生する場合は、出演契約の解除後も著作権や著作隣接権は消滅せず、侵害行為に対しては著作権に基づく法的措置を取ることが可能と考えられる。 このように、本法案は、著作権や著作隣接権の発生や消滅について、何ら影響を与えるものではない。

【問4】違法にアップロードされた、いわゆる「海賊版」のAVについては、どのような対応が考えられるか。
【答】違法にアップロードされた、いわゆる「海賊版」のAVは、本法案第15条の差止請求権の対象となるため、出演者は、同条に基づき、その公表の停止を請求することができる。 この際、制作公表者は、必要な協力を行うこととなっており、「海賊版」に対しても、対応できる範囲で協力することが期待される。 また、本法案とは別に、例えばAVメーカーなどの著作権者は、著作権法第112条に基づく差止請求や、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報開示請求を行いアップロードした者を特定した上で、損害賠償請求を行うこともできる。

【問5】契約解除や取消をしたとして、作品の発表をしていれば一旦、流出してしまい、解除後に第三者がその映像をアップロードしてしまった場合は?
【答】お尋ねは、AVの購入者が無断でAVをインターネット上にアップロードするという著作権侵害の事案となるが、出演契約の解消を前提とした本法の適用関係について申し上げれば、出演者は、第15条に基づく差止請求ができる。 また、当該AVは第16条の「性行為映像制作物侵害情報」に該当すると考えられるため、出演者は、プロバイダ責任制限法の特例を定めた同条の規定により削除を申し出ることができる。

【問6】出演者が制作公表者や関係者の氏名・住所を知らない場合には、差止請求権を行使することができず、AVの公表・拡散を止められないのではないか。
【答】本法案は、制作公表者以外の者がAVの公表を行う場合には、その者を特定するために必要な事項を出演契約書等に記載する義務を規定しており(第4条第3項第6号)、この義務に違反した場合には罰則も設けている。 また、制作公表者は、差止請求をしようとする出演者への情報提供などの協力を義務づけている(第15条第3項)。 これらの規定を通じ、出演者がAVの公表を行っている者を特定し、その者に差止請求することが容易になると考えられる。 また、AVがインターネットで公表されている場合、制作公表者の氏名・住所を知らなくとも、公表されているサイトの管理者や運営者に対し、本法案の差止請求権を行使することが考えられる。

【問7】何層にも出演者保護を、現行法最大で図っている本法案。厳格な規制を設けているため、「かえって事業者が闇に潜る(アンダーグラウンド化する)おそれがあるのではないか」との声がネットに流れている。本法案は、個人として制作公表するAVについても適用されるのか。 また、会員のみが入れるウェブサイトのような限られた範囲でAVを配信する場合も「公表」となり、本法案の対象となるのか。
【答】本法案の対象となる「制作公表者」は、出演者との間で、出演契約、すなわち性行為映像制作物において性行為にかかる姿態の撮影の対象となり、その性行為映像制作物の制作公表を行うことを承諾することを内容とする契約を締結し、又は締結しようとする者であり(第2条第7項)、事業者であるか個人であるかを問わない。 このため、事業者に限らず、個人として性行為映像制作物を制作公表している場合にも、本法案が適用される。
 なお、出演契約書等や説明書面等の不交付等があった場合には、罰則の対象(第21条)となるなど「アンダーグラウンド化」に対しては厳正に対処されると考えている。 本法案において、「公表」とは、「頒布、公衆送信又は上映」のことをいい、ここでいう「公衆送信」とは「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと」をいう。この「公衆」には、不特定又は多数の者のみならず、「特定かつ多数の者」を含むものとしている(第2条第5項)。 したがって、御指摘の会員のみ入れるウェブサイトのような限られた範囲でAVを配信する行為についても、多数の者に対して行われたものということができれば、本法案の「公表」に当たる。

【問8】例えば、契約を適切に締結していない場合など、特定のメーカーの不適切な事案が複数顕在化した場合、差止請求がなされていない作品はそのままサイトなどで販売が継続されることになる。それを改善させる必要があるのではないか。
【答】自己の性行為に係る姿態を撮影した性行為映像制作物が出演者の意思に反して公衆の目に触れることになる場合には、その者の性をめぐる個人としての尊厳が著しく害されることになる。 このような被害の拡大を防ぐため、本法案では、説明書面や出演契約書の不交付や必要事項の不記載に対しては罰則を設けており、違反事案があれば摘発されることになる。また、第15条の差止請求権や第16条のプロバイダ責任制限法の特例も設けている。 これらの仕組みが的確かつ円滑に活用されることによって、性行為映像制作物の制作公表を停止・予防することが大変重要であると考えている。
 本法案の運用に当たり、政府においては、罰則違反の取締りや、差止請求などが的確かつ円滑に行われるよう支援を行うとともに、既存のインターネット上の違法・有害情報への対策も参考にしつつ、意思に反する性行為映像制作物の公表に対して、しっかりと対応していただきたい。

 最後に、「以上、8問質問したが、インターネットや問い合わせの中でかなりの数の方が色々と心配しているものを中心に取り上げた。今の質疑そしてこの後の委員の質疑で多くの方がほっとする法案だと思っている。何より、被害者救済が一番。心を一つにここまで来られたこと、皆さまに感謝を申し上げ、質問を終わります。本当にありがとうございました。」と質疑を終えました。
 質疑が終了し採決が行われ、「AV出演被害防止・救済法案」は全会一致を持って可決されました。

2022年6月14日朝日新聞デジタル記事はこちら

2022年6月14日NHK NEWS WEB記事はこちら

2022年6月14日TBS NEWS DIG記事はこちら

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