「経済安全保障政策が経済活動の萎縮を招くものとならないよう強く政府に求め」 ~参議院本会議~

 5月9日の内閣委員会そして5月10日の参議院本会議で「セキュリティクリアランス法案」の討論、採決が行われ、塩村は立憲民主・社民会派を代表して、それぞれ賛成の討論を行いました。

 塩村あやかの賛成討論は「2:16:10」からです。

 以下、塩村の本会議での賛成討論全文です。

 立憲民主・社民の塩村あやかです。
 会派を代表して、ただいま議題となりました重要経済安保情報保護活用法案及び経済安全保障推進法改正案について、いずれも賛成の立場から討論を行います。
 まず、重要経済安保情報保護活用法案でありますが、経済安全保障の重要性が高まってきている中で、二年前、立憲民主党も賛成をして、経済安全保障推進法が成立いたしました。その際、我が党主導で附帯決議に盛り込まれたのがセキュリティークリアランス制度でした。
 我が国では、特定秘密保護法に基づくセキュリティークリアランス制度は既に存在していますが、同制度の対象となる情報は、外交、防衛、テロ防止、スパイ防止の四分野に限定されております。
 一方、G7各国を始めとした多くの先進国では、経済安全保障分野の機微な情報を対象としたセキュリティークリアランス制度が導入されており、我が国でも産業界から国際標準の制度創設を求める声が寄せられてきました。
 その日本産業の国際競争力ですが、バブル崩壊後、ほぼ凋落の一途をたどってきたと言っても過言ではありません。スイスのビジネススクールであるIMDが作成する国際競争力ランキングでは、日本は、一九八〇年代後半から九二年まではトップを走っていましたが、九〇年代後半の金融危機以降の長引く不況で一気に低下、その後も下落傾向が続き、二〇二三年には三十五位まで落ち込みました。
 アジア地域でも、台湾、香港、中国、韓国、タイ、インドネシアの後塵を拝している状況です。これが今の日本の現在地です。日本の国際競争力が低下をした理由としては、半導体産業などのこの間における不振のほか、中国や韓国への技術流出の問題などに有効な政策が打てなかったこと、そして、セキュリティークリアランスの不備が長らく続き、日本の研究者が国際的な共同研究にも入れてもらえず、科学技術の発展などに大きなマイナスを被ってきた問題も影響しているのではないでしょうか。
 この点について、高市大臣の答弁は、技術で勝ってビジネスで負けるといったことにならないように、優れた技術をいち早くビジネスにして、それを国内での需要にもつなげ、海外展開をしていく、こういう流れをつくっていかなければならないといった見解に加え、今回のセキュリティークリアランス制度は、事業者の国際的なビジネス展開にも資するものであり、日本企業の国際競争力を高めるためにも役に立つと期待しているとのことでした。
 その一翼を担う可能性のあるスタートアップが適合事業者となる可能性について、大臣は、セキュリティークリアランス制度の導入によって、衛星、AI、量子、ビヨンド5Gといった次世代技術の国際共同開発に関する機会が拡充していくのではないかとの指摘がある、こうした技術がどのような製品やサービスにつながる可能性があるかということについては、例えば、衛星情報のAI解析というのは、水道管の老朽化のチェックとか、また農林水産業などでも活用されており、様々な可能性を開くことにつながっていく、スタートアップなども含めて、適合事業者として認められれば、いろいろな形で可能性が開けると答弁しています。

 一方、本年四月には、経済産業省の経済産業政策新機軸部会からは、衝撃的な将来予想が発表されました。
 それは、失われた三十年と同じような考え方、やり方で進んだ場合、二〇四〇年頃に向けたシナリオとして、実質賃金やGDPの成長は横ばいにとどまり、新興国に追い付かれ、海外と比べて豊かではない状況に陥る可能性が高いというものです。先ほど日本の現在地をお伝えしましたが、これが今見えている日本の未来です。果たしてこのままでいいのでしょうか。
 参議院内閣委員会の附帯決議では、大企業のみならず、中小企業やスタートアップ等が適合事業者として認定され、国際共同研究開発に参加をすることなどを通じて、我が国の産業競争力を維持強化できるよう、官民の協力体制の構築や必要な支援を行うこととの衆議院では盛り込まれなかった項目が追加されています。
 新興国に追い抜かれるといった悲観的なシナリオに陥らないためにも、附帯決議に盛り込んだように、新たなセキュリティークリアランス制度が大企業に限らずスタートアップなどにも幅広く活用されることで、国際研究開発が進み、ひいては我が国産業の国際競争力の強化を実現させる一つのきっかけ、契機とすべきではないでしょうか。
 他方で、審議を通じて法案の問題点や課題も明らかになりました。
 特に問題なのは、制度設計の重要な部分が、重要な部分の多くが運用基準に委ねられており、法案審議の段階では重要経済安保情報に指定される情報の範囲すら明確になったとは言い難い点です。
 我が会派の鬼木誠議員が対総理質疑で指摘をしたように、企業・団体献金を行う企業が望む情報を指定することすらできる仕組みです。衆議院修正によって国会による監視を機能させる規定が追加をされるなど、前進も見られましたが、特定秘密保護法施行後の検証を踏まえた秘密保全制度全体の一層の改善が求められます。
 そして、国民の権利利益に関わる運用基準の不透明さなど、制度全体に対する我々の懸念が完全に払拭されたわけではありません。新法の適正な運用、知る権利、人権、適性評価を受ける本人や家族などのプライバシーが不当に侵害されることがないように、また国民の不安が解消されるよう、今後の運用を注視をしていくことが極めて重要であると考えます。

 次に、経済安全保障推進法改正案については、二年前に国会でも港湾を基幹インフラに追加すべきとの議論があったにもかかわらず、国土交通省は港湾へのサイバー攻撃を過小評価し、追加されませんでした。昨年七月、名古屋港におけるサイバー事案が起きてしまったことは、政府のリスク分析が甘かったためであり、猛省を促したいと思います。
 また、内閣委員会、そして経済産業委員会との連合審査会では、医療機関がサイバー攻撃の対象となることを危惧する意見が多く出ました。医療DXの進展も踏まえつつ、基幹インフラに追加するのが後追い的にならないよう強く求めておきます。
 最後に、経済安全保障版のセキュリティークリアランス制度には、国際共同研究への参画を通じた産業競争力の強化に資するといった期待がある一方で、適性評価のための身元調査などを含むことから、人権やプライバシーを侵害するといった懸念が存在することも事実であります。
 本来、こういった懸念や疑念は制度の適切な運用によって払拭すべきものですが、その大前提は信頼される政府でなくてはならないということです。v  政府に対する国民の信頼という点において、与党、とりわけ自民党の裏金議員各位におかれましては、真摯に自問自答していただきたいと思います。あなたたちは国民全体を向いた政治を行ってきましたか。企業・団体献金や、パーティー券の購入をしてくれる企業や団体の意向に沿った政治を行い続けてきたのではないですか。その結果、分厚かった日本の中間層は崩壊しつつあると指摘される状況になったのではないですか。国民の暮らしは政治の不作為によって苦しくなるのに、自民党政治家は裏金によって懐を潤す。そんな裏金議員の皆さんに本法案に疑念を持つ国民を説得することができるでしょうか。
 水俣病被害者の方との対話では、マイクを切ってしまう。そんな対応をする政府を国民は信頼するでしょうか。その結果は、さきの衆議院の補選で表れているのではないでしょうか。
 そして、経済安全保障の錦の御旗の下に、捜査当局が暴走し、大川原化工機事件のような冤罪事件が起きることが二度とあってはなりません。セキュリティークリアランス制度の創設を始めとした経済安全保障政策が経済活動の萎縮を招くものとならないよう強く政府に求め、賛成討論を終わります。
 御清聴ありがとうございました。

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