「節目の年」、日本が使命を果たせるように ~外交防衛委員会~

去る3月24日に外交防衛委員会委嘱審査が行われました。

塩村は、戦後80年談話、戦没者慰霊碑の管理問題、ODA(政府開発援助)、国連改革等について、岩屋毅外務大臣、仁木博文厚生労働副大臣らと質疑しました。

 

 

▶動画はこちらから◀
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8381
塩村あやかの質問は「5:56:00」からです。

 

当日の質疑の内容は以下の通りです。

 

【戦後80年の総理談話について】

塩村:まず、戦後80年の談話について伺いたいと思います。これまでの歴史を振り返り、そして今、秩序が大きく変わろうとしている中で、談話を出す意義はあると私は考えますが、外務大臣の考えをお伺いしたいと思います。

岩屋外務大臣:石破内閣はこれまでの内閣総理大臣談話、歴代の総理大臣談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、これからも引き継いでいく。その上で、現時点で新たな談話を発出するかは決定しておらず、今後の対応については、これまでの経緯も踏まえながら、様々な観点から考えていきたい。いずれにしても御指摘のように、国際社会が非常に大きな転換点を迎え、自由で開かれた国際秩序が激しく揺らいでいる中で、2025年の様々な機会を捉えて世界の平和と繁栄に向けた未来志向の発信に努めていくことは当然であると考えている。

塩村:ありがとうございます。「意義はあるか」という問いには直接的にはお答えいただけていないかと思いますが、今の御答弁を聞く限り、私と考え方は同じではないかと考えております。次に、令和7年度の予算案に戦後80年を契機とした事業は盛り込まれているのか、こちらをお伺いしたいと思います。

岩屋外務大臣:戦後80年を契機とした未来志向の取組は多岐にわたっているが、予算案の中で戦後80年をうたって整理した事業を計上しているわけではない。

塩村:良い契機になると思いますし、こういうときだからこそ、日本が国内外に何かをしっかりと発信していくべきではないかと考えますが、そのための明示された予算はないということで、ちょっと残念だなと思っております。ただ、今後何か出てくるかもしれませんし、期待をしたいとも思っております。そして、私は被爆2世でもあるのですが戦後80年ということは被爆からも80年となります。それに関し、日本政府として国際社会に訴えるべきメッセージは何なのか、お伺いしたいと思います。

岩屋外務大臣:政府としては、広島及び長崎に対する原爆投下は本当に多くの尊い命を奪い、事後にも病気や障害で言葉に尽くせない苦難を強いた、人道上極めて遺憾な事態をもたらす出来事であったと認識している。したがって、この多大な惨禍をもたらし得る兵器が二度と使用されることがないよう、核兵器のない世界の実現を目指して一層、国際社会の取組を主導していきたいと考えている。

塩村:ありがとうございます。以上のお答えを含んで、やはり総理の談話は出していただきたいと私は考えております。公明党さんも後押しをしているようですが、一方で気になるのは、自民党さんの中から談話の発出に反対の声が出ているということですね。資料の記事の写真をご覧いただければ分かるかと思いますが、ダークスーツを着た中高年の男性ばかりだということで、SNSでも一部話題になっておりました。これはやはり、意見や考え方に偏りも出てくるのではないかと私は思います。戦後日本が培ってきた国際社会での役割を果たし、名誉ある地位で居続けるためにも、良い契機になると思います。周辺環境が厳しい今だからこそ、戦後の日本らしい価値観を持った談話の発出を期待しております。

 

 

【戦没者慰霊碑の管理について】

塩村:私はこれまで、海外の慰霊碑の管理や保全をしっかり行っていくべきだとして質疑を行ってまいりましたが、本日は日本国内の、公有地にある慰霊碑に関して質疑を行いたいと考えます。去る2月、委員派遣で広島県を訪問した際に、非公式ではありますが、有志で呉市の旧海軍墓地に行ってまいりました。そちらにある設営隊の慰霊碑に、過去には確認できなかった旭日旗(軍艦旗)が赤く彫刻されておりました。敷地内には100程度の石碑があり、「大和」をはじめ戦艦や駆逐艦、潜水艦などの慰霊碑も置かれているのですが、そうした軍艦の慰霊碑には彫られていない旭日旗がなぜか、「徴用された非戦闘員」かつ「艦船や艦艇の乗務員でもない」設営隊の慰霊碑に彫刻されていたわけです。

強烈な違和感を持った私はその後、事務局を通して質問などをさせていただきました。当該墓地は元々国有地でしたが、現在は呉市に移譲されており、同市はというと、私たちと一緒に行って初めて旭日旗の存在を把握したとのことでした。慰霊碑の設置団体は戦友会ですが、その団体の方はもう死亡したとのことで、その場合、慰霊碑の管理はどうなるのかと質問したところ、呉市からは「管理者がいなくならないように設置団体で後継者を決めてもらう必要があると考えている」という答弁が来まして、設置団体の方々はすでに亡くなっているのに、どうやって後継者を決めるのか、疑問であります。このことはつまり、国内の公有地にある慰霊碑ですら、放置していたら姿形が、そして建立時の遺族の思いや趣旨等までもが変わってしまう可能性があるということで、非常に不安があります。そこでお伺いしたいのですが、慰霊碑の保存の在り方について、原則を教えてください。

政府参考人(厚生労働省):民間団体などが建立した戦没者慰霊碑については、建立者等が自ら維持管理を行うことが基本であると認識している。他方、建立者の不明などにより維持管理状況が不良であるものについては地方公共団体が移設などを行う場合にその費用の二分の一を補助する事業を実施しており、令和7年度の予算案では、本事業の補助上限額を50万円から100万円に引き上げて計上したところである。

塩村:今回のケースにおいては、慰霊碑すでに公有地にあるわけですから、その予算は使えないということになります。こうした場合の責任の所在はどうなるのか、お伺いしたいと思います。

政府参考人(財務省):土地の所有者としての管理責任は、現在呉市が有しているものと承知している。

塩村:つまり、責任の所在は自治体の方に移っているという回答ですが、呉市からの回答に従うなら、もう何もできないということになってしまいますよね。本当にこのままで良いのかと思います。戦後100年、あるいはその先を見据えたときの慰霊碑のあるべき姿について、今回の事例も踏まえた感想と御答弁を、副大臣にいただきたいと思います。

仁木厚生労働副大臣:厚生労働省としては、さきの大戦に関する記憶を継承し、また戦争の悲惨さや平和の尊さを後世に伝えていく上で、御遺族や戦友等が各地に建立した慰霊碑が適切に維持管理されていくことは重要であると考えており、民間建立の慰霊碑に対する地方公共団体の取組を支援していきたいとも思っている。その上で呉市の慰霊碑については、同市の方に更なる事実関係の把握等を行っていただいた上、必要な対応を今後とも行っていただくことが望ましいのではないかと考えている。

塩村:しかしながら、自治体側の対応であり、本当にこれでいいんですか?ということが私の今回の質問の原点です。というのも、当該の設営隊には私の大おじも所属しておりまして、彼の家系のお墓に最近行ってみたら、墓じまいがされていたんです。遺骨は返ってきていませんので、もとより骨も入っていなかったお墓ですが、なくなっていました。つまり、お墓もない、遺骨もないというような状況の中、私のような後ろの世代の人間がどこで手を合わせるんだろうと思っていたところ、慰霊碑までもがこんな状況になっていたというのは、遺族の一人としてとても問題だと考えます。元は国が管理していた場所ですし、戦死をしたというところもあると思うので、国が是非、しっかりと自治体にも方向性を示して頂きたいと考えています。

 

【ODAの在り方について】

塩村:昨今、日本がODA予算を大きく増加させることはとても難しく、為替が円安にもなっている中で、戦略的な展開が必要であると考えています。中国のような大規模なインフラ事業よりも、日本の技術力を生かした分野に重点的にリソースを割くべきであり、総額よりも質や技術力をもって支援を行っていくことが重要ではないかと考えています。たとえば東南アジアにおいては、フィリピンをはじめごみ山問題を抱えている国があります。都市のサイズに合わせた環境型の焼却炉などを戦略的に提供し、日本のプレゼンスを最大限に発揮していくべきかと思いますし、日本にはそうした技術があるという聞いております。見解をお伺いします。

政府参考人(外務省):御指摘のとおり、東南アジア地域においては廃棄物処理は大きな課題となっており、我が国はこれまで、日本の高い技術力や知見を生かして、東南アジア地域に対する廃棄物対策、リサイクルに係る能力構築や海洋プラスチックごみ調査分析機材の供与といった支援を行ってきた。フィリピンに対する開発協力方針においても、廃棄物管理を含む環境問題を重点分野の一つとしており、例えば、ダバオ市における廃棄物処理、発電施設の整備支援や、日本企業による廃プラスチックの燃料化に関するビジネス展開支援などを実施している。今後とも、相手国のニーズを踏まえながら、日本の高い技術力や知見を生かした質の高い支援を実施していきたいと考えている。

塩村:重点的な方針、そうしたものに合致をする事業の分野のうち、廃棄物処理以外に日本の技術を使ったオファー型には何があるのか、教えてください。

政府参考人(外務省):具体的には、2023年9月に策定されたオファー型協力に係る戦略文書というものがあり、気候変動対策、経済の強靱化、デジタル化の三分野を戦略的に取り組む分野として選定している。

塩村:中国の台頭はすさまじいので、日本も環境型の焼却炉を含め、御紹介いただいたものに早めに着手をして案件をまとめていくことが重要であると思いますが、見解をお伺いいたします。

政府参考人(外務省):中国の途上国向けの融資はいわゆるOECDなど多くのドナーが参加する場のルール、そして枠組みに依拠しておらず不透明であるとの指摘がなさ
れており、動向を注視しているところである。日本のODAの迅速性の向上については、重要な課題であると認識している。2023年に閣議決定した開発協力大綱においても、動きの速い民間投資と連携した協力の必要性に鑑みて、迅速な意思決定と協力の実施が可能になるよう制度改善を行っていく旨を表明しており、オファー型協力もその一例である。
塩村:ダバオ市の廃棄物処理に関してこちらで調べてみたところ、実はしっかり進んでいないのではないか、との認識があります。改善が必要かと思いますが、一言御答弁いただいてもよろしいでしょうか。
政府参考人(外務省):指摘の案件については、現地の市長と話合いも行っており、今後も、中央政府との関係も含め、優先順位等を整理させていただければと思っている。
塩村:是非しっかり進めていただきたいと思います。というのも、その自治体は、戦後すぐに日本が井戸掘りなど様々な協力に取り組んできたことから、戦時中は激戦地で日本軍の駐屯地のあった場所にもかかわらず、親日の感情を持ってくださっています。その感情を壊すことなく育てていくことが非常に重要であると思っておりますので、対応の方をよろしくお願いいたします。

 

【国連改革について】

塩村:国連創設80周年、安保理改革を実現するためのまたとない機会であり、その機会を、日本が歴史的な使命を果たしていくためにもしっかりと生かしていただきたいと思っております。ウクライナやガザの情勢をめぐって国連が機能不全に陥っていると指摘される中、日本は自らが常任理事国になることだけに専心せず、全体のことを考えて、いま壊れようとしている秩序を守っていくことが何よりも重要だと考えます。より多くの国が参加ができる安保理となるよう、包括的な改革を進めていくべきかと思いますが、この点について外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。

岩屋外務大臣:御指摘の通り、安保理はもう機能不全と言っても過言ではないという状況に陥っているが、これを災い転じて福となす契機にしていかなければならないと思う。日本は常任及び非常任の双方の議席拡大を目指しているが、昨年9月の未来サミットでは世界の首脳が安保理改革の緊急の必要性で一致をしており、この改革の機運を盛り上げていくべく、我が国も実現に向けて、場合によっては必ずしも従来の案にこだわらずに取り組んでいく必要があると考えている。

塩村:元国連事務総長特別代表の長谷川祐弘氏は、2025年から再選可能・任期5年の非常任理事国を10議席増大し、2045年には現在の常任理事国5議席を拒否権あり・再選可能の10年の任期制に変更するという「2段階の改革」を提唱しています。この改革案への見解をお伺いします。

政府参考人(外務省):現時点では我が国としては検討しておらず、常任及び非常任の双方の議席を拡大するという当初からの案を追求している。

塩村:「2段階の改革」以外に、日本が早期に安保理に日本が戻れるための方策があるのであれば、どのように戦略を練って進めていこうとしているのか、具体的に教えていただきたいと思います。

政府参考人(外務省):2032年及び2043年の安保理非常任理事国の選挙への立候補を国連の手続に従って登録をしている。我が国は昨年末で12回目の安保理任期を終えたが、引き続き様々な形で安保理の議論に貢献し、国際の平和と安全の維持と、法の支配に基づく国際秩序の強化を目指していく。

塩村:次の理事会入りまで、長ければ20年近く空いてしまう可能性もあると。例えば北朝鮮の決議を取るとき、日本がその場にいることが有利に働く場合もあるでしょうし、日本の国際的なプレゼンスを保つためにも、やはり理事会にいた方が良いと思いますので、もう少し戦略的に方策を考えていかないと。特に、私は被爆2世でありますから平和への思いもとても強いものがありまして、戦後の日本が歩んできた平和外交というものを広げていけるように、一つの案にこだわることなくいろいろ検討していただきたいとお願いをして、質問を終わります。

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