去る4月17日に外交防衛委員会が行われました。
塩村は風化する海外慰霊碑の問題や日系人の国籍喪失問題について、岩屋毅外務大臣、中谷元防衛大臣らと質疑しました。
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https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8461
塩村の出番は「 1: 59: 35」ごろからです。
当日の質疑の内容は以下の通りです。
【風化する海外慰霊碑】
戦後80年。大戦中、海外で亡くなった軍人や民間人らの慰霊碑の状態悪化が進んでいます。
一般財団法人日本遺族会によると、10年前の時点で25の国と地域にある慰霊碑のうち約3割が管理の行き届いていない「不良」状態であったとのことです。
この問題について外務大臣、防衛大臣はどう考えているのでしょうか。
塩村:風化する海外慰霊碑に対する考えをお伺いしたいと思います。
中谷防衛大臣:東南アジア各地には慰霊碑や追悼の記念碑があり、私も訪れた際には極力追悼、お参りをさせていただきたいと思うが、この慰霊の場を訪れるたびに、さきの大戦の惨禍を感じ、二度とこういうことは繰り返してはいけないと胸に刻んでいる。
塩村:おっしゃるとおり、さきの大戦の惨禍を絶対に忘れてはいけないと私も思います。フィリピンには319の慰霊碑がありまして、その半数以上が風化し、管理の行き届いていない「不良」の状態だとされています。こうした海外慰霊碑の問題について、外務省ももっとしっかりコミットをしていくべきではないかと思うのですが、外務大臣に、お考えをお伺いします。
岩屋外務大臣:厚労省が戦後80年に関連して様々な事業を実施予定であり、その中で国内外の慰霊碑に関し、補修などの取り組みを進めていく予定であると承知をしている。外務省としても、この厚労省の取り組みに可能な限り支援を行っていきたいと思う。1月24日の閣僚懇談会の席上、厚生労働大臣から閣僚に対し、海外出張等の機会を捉えて政府建立の戦没者慰霊碑を訪問していただきたいと依頼もあった。引き続き、閣僚等による慰霊碑訪問への協力もしっかり行っていきたいと思う。
塩村:海外で慰霊碑を守っていこうとしたときに、厚労省だけでしっかりできるのかという疑問があります。厚労省が進めてきたのは、傷んだものを埋設するという事業で、つまり慰霊碑の数がどんどん減り、最後にはなくなってしまうような事業を進めているということです。それが過去の記憶の風化にもつながってくると思いますので、厚労省だけでなく、外務省も海外の慰霊碑についてはしっかりと取り組んでいただきたいと思っておりますし、防衛大臣も機会があれば改めて慰霊碑を訪れていただきたいと思っております。
【フィリピン残留日本人2世】
去る3月5日の予算委員会で、石破首相がフィリピン残留日本人2世の帰国に関して前向きな答弁を行いましたが、その後の進捗はどうなっているのでしょうか。
塩村:先般、予算委員会で総理の方からも非常に前向きな答弁をいただきましたが、8月15日の終戦の日までに是非、生存されている2世の皆さんに日本の地を踏んでいただきたいと思っております。進捗をお伺いします。
岩屋外務大臣:政府内で真剣に検討中である。政府としても、これが実現するように可能な限り努力をしていきたいと考えている。
塩村:ありがとうございます。本当に時間がございませんので、対応していただきたいと思います。
【日系人の国籍喪失問題】
「重国籍」とは複数の国籍を持つことで、出生による場合や、後から外国籍を取得する場合に生じるものです。
日本はこの重国籍を容認しておらず、海外に住む日系人の方々や、国外から移住してきた方々の不利益になる場面もあります。
国際競争力の維持や労働力の補完のため、重国籍を容認する方向へ転換する国も出てきており、日本でも検討が必要な段階になっているのではないでしょうか。
塩村:これは「求ム海外日系人」という日経新聞の記事で、日本政府が世界の日系社会と関わりを強めたい、強めていると伝えています。政府が日系社会との関わりを強めている理由を教えてください。
政府参考人(外務省):日系人の方々は様々な分野で活躍しており、各国と日本との関係強化にも大きく貢献していただいている。こういった日系人の方々のコミュニティー、そしてネットワークは我が国の外交にとって非常に貴重な財産であり、様々な形で日系人社会との連携に取り組んでいる。
塩村:記事によると、日本が経済成長の低迷や人口の減少で国際競争力を落としている現状を踏まえ、日系人が持つ力への評価を高めているということでした。そして、外交や国内の労働力不足の補完役としても期待されていると記されていました。また、「首相周辺は、日系社会は経済や政治の面で必ずしも本国と思惑が一致していないと明かす」とも記されています。どのように思惑が一致していないのか、もし分析等があれば教えていただきたいと思います。
政府参考人(外務省):引用のコメントは背景がはっきりせず、これ自体について論評を加えることは難しいと思っている。ただ、国によってはすでに8世という方々もいらっしゃり、帰属意識そのものが薄れてきているところもあろうかと思う。いずれにせよ、そういった点も含め、若い世代の方々との関係を一層強化していくことが重要だと考えている。
塩村:海外の日系人大会が力を入れていろいろと開催されており、そちらでは、海外で生まれ育った子供が日本人、日系人としてのアイデンティティーを保つには、国籍に関する法律の改正が必要であるとの大会宣言が採択がされたということです。海外日系人大会の大会宣言、これについて大臣の所見をお伺いします。
岩屋外務大臣:海外に住まわれる日系人コミュニティーとのネットワークは、我が国の外交にとっても貴重な財産だと考えており、外務省としては引き続き日系人社会との連携を重視していきたい。
塩村:ドイツや韓国のように、国際競争力の維持や労働力の補完のため、重国籍の容認にかじを切った国も多く、実績を上げてきているという現実があります。90年代以降、多くの国が法改正していますが、日本の対応はどうも遅いと思います。いかがでしょうか。
政府参考人(外務省):国籍の問題は本来法務省の所掌であるが、様々な御意見も国内にあるということで、そういった意見もしっかりと聞きながら検討していく必要があると思っている。
塩村:日系人に限らず、高度な技能を持った労働者が日本に定着しようとする場合、数年で永住権が獲得ができて、希望すれば日本国籍が取得できますが、その場合は母国の国籍を喪失することとなります。国籍を失うと同時に自身の国で身分登録が抹消されたり、仕事や不動産の所有ができなくなったり、税率が上がったり、アメリカであれば国籍離脱税を取られるということもあります。優秀な人材が違う国に住んで仕事をしようとするときに、国籍喪失のデメリットがある国を選択するのかという問題に今日本は直面し始めているのではないかと思います。そうした選択を迫られない国を選ぶのが現実だと考えます。国際社会で活躍する日本人が、仕事で現地の国籍が必要になる場合もあるかと思います。こうした現実は、日本からの人材流出や、人材獲得の面でも問題があると思いますし、頭脳の流出にもつながっていると思うのですが、外務大臣の所見をお伺いします。
岩屋外務大臣:国際社会で一層多くの日系人が活躍していくことは我が国の存在感を高めることにもつながっていくし、ひいては日本全体の国際競争力を強化していく観点からも重要である。外務省としてもそのことをしっかりと意識し、そのための環境整備を始め、必要な対応を行っていきたいと考えている。
塩村:これから先、海外に日系人が増えていくかというと、戦前戦後のように出ていくような時代ではなくなってきていますので、いかにして日系人に日本への帰属意識を持ってもらうのか、そこが重要になってくると思います。そして、海外の日系人大会では日系人の方々が大きな危機感を抱きながら大会宣言に要望を盛り込んでいる。これを是非受け止めていただき、良質な労働力の確保だけではなく、頭脳の流出防止や逆に来ていただくという選択肢のことも含めて考えますと、そろそろ日本もこうした問題を皆で考えていかなければ国益を損なう時代に入ってきており、是非検討をお願いしたいと申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。