マンション所有、トランプ関税、日本政府の対応は? ~外交防衛委員会~

去る6月3日に外交防衛委員会が行われました。
塩村は外国人によるマンションの所有や、トランプ関税をめぐる中南米諸国との連携について、岩屋毅外務大臣、国定勇人・国土交通大臣政務官、神田潤一・法務大臣政務官らと質疑しました。

▶動画はこちらから◀
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8581
塩村の出番は「 0: 31: 09」ごろからです。

当日の質疑の内容は以下の通りです。

 

【外国人による不動産の所有について】

5月27日の質疑で取り上げたテーマの続きです。

外国人による日本国内での不動産所有が増えるにつれ、様々なトラブルが発生し、または予見されています。

距離の壁、言葉の壁、そして習慣の違いもある中で、万全な対処は可能なのでしょうか。

終盤ではマンション管理士の活用や孤独死など、日本人の居住者に関わってくる問題も取り上げました。

塩村:前回の質疑では、外国人による不動産の取得やマンションの管理に関する質問が途中で終わってしまいましたので、本日はそこから始めたいと思います。まずは、外国人のマンション管理組合への参加の割合を把握しているのか、お伺いします。

政府参考人(国土交通省):令和5年度に行ったマンション総合調査は、日本人であるか外国人であるかを区別しない形で参加割合を調査している。委任状や議決権行使書の提出を含む総会への参加割合は、外国人区分所有者がいるマンションも含めて平均で約9割となっており、外国人の所有者がいることで直ちに総会運営が難しくなる状況ではないと見ている。一方で、外国在住の所有者や外国人の居住者が多い場合に配慮や対応が求められているとの声があり、我々もそのような認識は持っている。

塩村:日本語のハードルがある中で、議案書、委任状などの理解や議決権の行使、円滑な総会の運営はできているのか、お伺いしたいと思います。

国定勇人・国土交通大臣政務官:先日成立したマンション関連法改正法では、外国人を含めた区分所有者の間で管理について円滑に合意形成を図れるよう、修繕等の日常の管理行為に係る決議を出席者による多数決で行えることとするほか、国内に住所を有しない区分所有者が国内管理人を選任できる制度を創設するなどの措置を講じるとしている。また、外国人への対応については、例えばマンション管理センターで標準管理規約の外国語版を作成しているほか、マンション管理業協会で共有部分の使い方などについて、多言語での文例集やピクトグラムを作成している。

塩村:私も法改正自体は必要だったと考えますが、一方で、外国人であるがゆえに、改正を知らなかったということもあるかと思います。多言語で、しっかりと周知していただきたいと思うので、そこの部分、改めて答弁をいただいてもよろしいでしょうか。

国定国交大臣政務官:改正法の趣旨を徹底していくことが、外国人を含む全ての区分所有者の便益につながると考えており、しっかりと取り組んでいきたいと思う。

塩村:ありがとうございます。次の質問ですが、最近、高級タワーマンションの上階層に住民登録のない部屋が増加していて、それが外国人と関係しているのではないかという記事が散見されます。分かっていることがあれば教えてください。

国定国交大臣政務官:神戸市の有識者会議の報告書によると、上層階ほど居住はせず、投資あるいはセカンドハウス目的で所有している可能性が高いといったことが挙げられている。

塩村:外国人が購入した部屋がインバウンド用の民泊に利用されるなどして、マンション全体の環境の悪化を招いているような事例もあると聞きます。こうした状況への対応について、見解がありましたらどうぞ。

国定国交大臣政務官:マンションについては居住者の合意形成をどのように取っていくかと、その結実としての管理規約の適切な運用が重要だと捉えている。いま御指摘いただいたことも含め、今般のマンション法の改正の趣旨を、まずは管理組合の皆様にしっかりとお伝えしていくことが肝要かと考えている。

塩村:日本以外には修繕積立金の制度がない国が多く、外国人所有者が使わなくなったマンションの管理費や修繕積立金を払わなくなることが懸念されています。その対応をどのようにしているのか、把握していれば教えてください。

国定国交大臣政務官:管理費等の滞納が生じた場合の措置については、マンション標準管理規約の附属資料にフローチャートや必要な手順等を示し、管理組合が円滑に滞納管理費等を回収できる取り組みを進めている。さらに先述の改正法では、国内に住所を有しない区分所有者が専有部分の管理のために国内管理人を選任できる制度を創設したところであり、それらの活用を促すことで外国人区分所有者への連絡を円滑化し、管理組合が管理費等を確実に徴収できるようにしたい。

塩村:改正前の、現状において滞納している外国人や海外居住者についてはどのように対応しているのか。それを教えていただきたいと思います。

国定国交大臣政務官:日本人であるか外国人であるかを問わず、督促を行っても滞納管理費等の支払がなされない場合には、当該所有者の区分所有権を競売に付すことで回収する手続が考えられる。

塩村:勝手に競売に掛けるわけにはいかず、きちんと法的な手段を取ってお知らせをしなければならないわけですが、外国の方についてはどのような手段を取ってお知らせをしているのか、お伺いしたいと思います。

政府参考人(国土交通省):いわゆるハーグ送達条約及びその実施法などの下における中央当局送達や領事送達などがあるが、一般的には早くても3か月程度を要し、事案によっては1年程度を要することもある。

塩村:時間を要することで、マンションの管理にさらなる支障が出てきますので、もう少しいろいろな対応を考えていくべきかと考えます。デジタルの時代に合った、違う方策で早めに問題を解決していくことが必要ではないかと思いますが、マンションの問題とは切り離して御答弁をいただけたらと思います。

政府参考人(法務省):国内における送達に比べ時間が掛かるという現状はあるが、当該外国との合意によって行われる必要があるため、引き続き、ハーグ送達条約などの国際的な枠組みに沿って実施することが相当であると考えられる。お尋ねの新たな方針等については、このような国際的な条約の内容等も踏まえて慎重に検討する必要があると考えている。

塩村:慎重に検討することは大切と思いますが、こういう問題こそ、日本がリーダーシップを取っていろいろな国と話をしていくことも必要なのではないかと考えます。政務官のお考えを聞かせていただけたらと思います。

神田潤一・法務大臣政務官:現在の手続に基づいて進めることが基本と考えているが、委員御指摘のとおり、デジタルの技術も進んでいると考えると、そうした点を取り入れる可能性はないのか、適切に検討していきたいと思う。

塩村:是非よろしくお願いします。次なんですが、先ほど御説明のあった国内管理人に関しまして、議決権の行使などを国内の代理人が代わりに行って、管理費や修繕積立金を支払える制度の創設だと説明を受けていますが、条文には「国内管理人を選任『できる』」とあり、選任しなくても良いわけで、これにどのぐらいの実効性があるのでしょうか。

神田法務大臣政務官:今般の改正法では、区分所有権の処分を伴わない決議について出席者の多数決により決することとしているため、海外に居住する区分所有者も議決権を行使しなければ自らに不利な決議がされ、これに拘束されるおそれがある。こうした不都合を避ける観点から、議決権を行使させるために国内管理人の制度が活用されることが期待される。つまり、この制度を活用するインセンティブがあると考えている。

塩村:マンションを適正に管理していく上で、マンション管理士の果たせる役割は大きいと考えており、より活用してもらえるような方策を進めていただきたいと考えています。個人でお願いするハードルを下げるための公的な支援や、独占業務資格化などが考えられますが、方向性とか見解があればお答えいただけたらと思います。

国定国交大臣政務官:独占業務資格化については、マンション管理業者や建築士なども管理組合の活動を支援をしている実態があり、実務面も含めた慎重な検討が必要かと考える。他方、マンションの管理においては法律、技術上の専門的な知識やノウハウが必要となることも事実であり、専門家を積極的に活用していくことも有効だと考えている。そのため国土交通省では、これまでもマンション管理士の団体と連携したシンポジウムを開催するなど、マンション管理士の活用の有効性、あるいは活用事例の紹介などを行ってきた。先述のマンション関係法改正法においても、マンション管理適正化支援法人の登録制度を創設し、各地域で活動しているマンション管理士の団体などが申請をし、登録を受けることを想定している。

塩村:相続人の不在問題が管理組合を悩ませています。今後外国人所有者でも多く発生することになるかと思われますが、実効的な対策があれば教えてください。

神田法務大臣政務官:不動産登記法改正で令和6年4月から相続登記が義務化され、令和8年4月には住所等変更登記の義務化がスタートする。これらの制度は相続人の探索を容易にし、所在等が不明になる事態の防止に資すると考える。他方、探索をしたものの相続人の存否や所在が不明である場合には、今般成立した改正区分所有法で新たに創設する所有者不明専有部分管理制度を活用することが考えられる。この制度により選任される所有者不明専有部分管理人は、専有部分等の保存行為等を行うことができることに加え、裁判所の許可を得た上で専有部分等の売却をすることも可能となっている。

塩村:マンションでの孤独死対策についてお伺いします。私の身近で最近あったケースなんですが、同級生たちが、最近姿を見ないからと役所や警察に連絡したけれども、個人情報の問題があって対応できませんと言われた末、2か月後に自宅で孤独死しているところが発見されたと。なぜこのように対応が遅れてしまうのか、分かっていることがあれば、御答弁いただけたと思います。

政府参考人(警察庁):お尋ねの事例の詳細については警察庁において把握しておらず、当該現場での警察の対応の適否を含めてお答えすることは困難である。

塩村:後ほど詳細をお伝えするので、このケースにおいて何故発見が遅れたのかをしっかりと検証し、二度と同じことが起こらないように対応していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

政府参考人(警察庁):詳細についてお伝えいただければ、こちらで確認をする。

塩村:ありがとうございます。是非お願いしたいと思います。

 

【トランプ関税をめぐる中南米諸国との連携について】

塩村は去る5月29日、大韓民国・済州島で開催された済州フォーラム2025に参加し、「安定か混乱か? トランプ2.0と東アジア」と題するセッションでパネリストを務めました。

その質疑応答の際、来場していたドミニカ大使から一つの質問を受けたといいます。

世界を揺るがすトランプ関税ですが、 その影響の直撃を受けているという中南米諸国。

日本には、彼らと協力し、事態に対処していくビジョンなどはあるのでしょうか。

岩屋外務大臣に質問しました。

塩村:先週、済州フォーラムという国際会議で、トランプ2.0における北東アジアの状況をどのようにしていくのかというセッションにパネリストとして参加しました。その場でドミニカの大使から私に質問がありまして、いわゆるトランプ関税への対応について日本に大きな期待をしており、今後、ドミニカをはじめとする国々と日本はどのような連携が取って行けるのか、方向性があれば是非聞かせてほしいと聞かれました。その場では、その質問に対する答えを持ち合わせていなかったため、委員会の質疑で政府に聞いてみますと答弁をして帰ってきました。このように日本に期待を寄せる国との連携について、今後の構想があれば教えてください。

岩屋外務大臣:現下の国際情勢において、価値や原則を共有する中南米の諸国との連携は重要性を増していると考えている。中南米外交イニシアティブという基本的な方針があり、その下で連携の強化を目指している。御指摘も踏まえ、様々な分野における中南米諸国との対話と協力をこれからも強化していきたいと考えている。

塩村:横並びでたくさんのセッションがある中、私たちが参加するものを選んで何人かの大使の方がいらしていて、おそらくこの質問がしたくて来たのだろうなと感じました。日本に対する期待はとても大きいと思いますので、しっかりと連携を取っていただきたいと考えます。大臣はお忙しいと思いますので、事務方の方でも、こうした国々と連携を取っていただきたいと思っております。いかがでしょうか。

岩屋外務大臣:中南米諸国とは日々連携を取っており、ドミニカも含め、日・中米フォーラム等を通じて意思疎通を図っている。御指摘も踏まえ、引き続き連携を強化していきたいと思う。

塩村:期待しております。よろしくお願いいたします。

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