本日の本会議、「こども家庭庁関連法案・こども基本法案」についての討論で登壇しました。
【本会議討論「こども家庭庁関連法案・こども基本法案】
討論の内容は以下の通りです。
立憲民主・社民の塩村あやかです。
私は、会派を代表し、内閣提出のこども家庭庁設置法案及びこども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に反対、衆議院提出のこども基本法案に賛成の立場から討論を行います。
冒頭、いわゆるAV出演被害防止・救済法案について、一言申し上げます。本年4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、若年層のAV出演被害が増加するのではないかという懸念から、質問主意書や委員会での質疑を通じて問題提起を行ってきました。
そして、各党の実務者のもと真摯な協議が行われ、年齢及び性別を問わず、AV出演による被害を防止するための法案を立法するに至りました。
本法案は、各党の実務者、支援団体等と徹底的に議論を重ね、これ以上被害者を増やさないという決意の下、憲法や現行法との兼ね合いを踏まえ、作成されたものです。
内閣委員会で私が野田大臣に本法案について質問した際、大臣からは「AV出演契約を無力化するために、これまでにない画期的な案になったと受け止めています」との答弁をいただいております。本法案の成立に向けて御尽力いただきました各党の皆様に感謝申し上げ、討論に入ります。
こどもを取り巻く状況は年々深刻さを増しております。2020年度における不登校の小中学生は約19.6万人、児童虐待の相談対応件数は約20.5万件とどちらも過去最多となる一方、2021年の出生数は約81万人と過去最少を更新しております。
コロナ禍において、政府が効果的な対策を打ち出せずにいる現状を踏まえると、こどもを取り巻く状況は今後も悪化の一途をたどり、まさに国家として危機的な状況を迎えてしまうのではないでしょうか。まさに、我々立憲民主党が掲げてきたチルドレンファーストの政策の実現が求められています。
今回、ようやく、政府からこどもの最善の利益の実現のために、こども家庭庁を創設する法案が提出されました。政府与党も、我々立憲民主党が掲げてきたチルドレンファーストの政策の必要性を理解した上で、法案を提出してきたのかと期待しましたが、その期待は…裏切られてしまいました。
その理由の第一は、こどもの最善の利益の実現を主張しておきながら、実際には大人の都合に基づいた行政組織、となってしまったことです。
我々立憲民主党は、こどもに関する施策を一元的につかさどる「こども省」の創設を訴えてきました。しかし、こども家庭庁においては、文部科学省の所掌する初等中等教育等について、それぞれの施策の専門性の向上という、理路整然としない理由に基づき、こども家庭庁には移管されませんでした。私がかねがね指摘している放課後児童クラブと放課後子供教室の縦割りも残念ながら残ったままです。
それだけではありません。学校飼育動物の問題も長年放置されています。災害の多い昨今、水害時には全滅、震災時には放置で餓死。さらに、繁殖によって増加したうさぎは動物園のライオンに生きたまま捕食させる「生き餌」にしていたことも報道で判明、予算がないことから病気や怪我をした動物は治療されないまま。
こども達に「命の軽視」を教えている状態です。そもそも、長期の休暇や卒業のある学校で、命を最後まで責任を持ち飼育することは不可能です。
多くの動物愛護団体や、公益財団法人を立ち上げ動物愛護活動をしている、杉本彩さん達からも「学校飼育動物の抜本的な見直し」や「学校での動物飼育」に疑問の声があがっています。こども家庭庁法案の審議において取り上げられたものの、文科省とこども家庭庁の縦割りが露呈する答弁が繰り返されました。本当に、一段高い位置から司令塔機能が発揮できるのでしょうか。「責任を持てないなら、飼わない」という当たり前の教育ができるよう、改善を強く求めておきます。
6月2日の内閣委員会で、野田大臣は「子供の立場からすると、(中略)省庁の縦割りというのは、子供の側からすると余り関係ない」との答弁がありました。確かに、こどもからしたら省庁の縦割り、といった事情は分からないかもしれません。
しかし、縦割りにより、こどもの必要とする支援が抜け落ちてしまっているため、新たな省庁を創設して対応するのではなかったのではないでしょうか。
結局、省庁間の縄張り争いの結果、こどもではなく大人の都合が優先されたとしか思えません。また、こども家庭庁という名称も、家庭という言葉に否定的な感情を持つ方々がいることを政府は承知しておきながら、与党の一部議員に配慮したのか、変更されることはありませんでした。こどもの最善の利益の実現のための組織ではなく、実態は大人の都合、政府与党の都合のための組織となっているのではないでしょうか。
理由の第二は、こども施策に関する予算について、政府から具体的な説明がほとんど行われていないことです。
岸田総理は将来的には倍増すると意気揚々と主張しておきながら、いつ倍増するのか、その財源はどうするのか、衆議院でも参議院でも多くの議員から質問されたものの、総理はお得意の「今後検討する」との答弁を連発されました。本当に実現するつもりがあるのでしょうか。総理の本気度が全く伝わってきません。
子育て政策において、圧倒的なリーダーシップで実績を出している、兵庫県明石市の泉市長との直接面会の提案も、泉市長は「いつでも」と言っているにもかかわらず、総理は「機会がありましたら」という社交辞令を議事録に残し、私達をがっかりさせました。
国民が待っているのは検討ではなく決断であります。我々立憲民主党は、子ども施策関連予算を対GDP比3%にするという具体的な目標を掲げており、我々と総理が向いている方向性は同じであるにもかかわらず、総理の決断はついに下されませんでした。
一方で、総理は自民党が防衛費をGDP比で2%以上と今の倍額を提案すると、「相当な増額」を表明しました。2%以上とは、現在にプラスして5兆円規模となり、この予算があれば何ができるでしょうか。
まず、「大学の授業料の無償化」は年1兆8千億円で実現可能です。
さらに、「児童手当」は、現在の中学3年までから、高校3年までに延長をし、親の所得制限を撤廃してひとり1万5千円とした場合は、年1兆円。
加えて小・中学校の給食無償化は、年間4千386億円で実現します。
これらの「大学無償化」「児童手当の拡充」「給食無償化」の全てを足し上げても3兆3千億円におさまり、防衛費のプラス5兆、と比較をしても、いかに日本はこどもや、保護者に厳しい国かという現実を浮き彫りにした審議だったと言わざるを得ません。
以上のとおり、真に「こどもの最善の利益の実現」のためとなる、組織が創設されるとは想定しがたいことから、政府提出の2法案については、反対いたします。
衆議院提出のこども基本法案については賛成いたします。
本法案については、当初、与野党協議の場が置かれ、共同で立法作業に当たってきました。立憲民主党の主張に基づき、協議の結果、児童の権利に関する条約の理念、こどもから若者までの切れ目のない支援、こどもに関する個人情報に対する取扱い、さらには、こどもコミッショナー設置の、今後の検討が本法案に盛り込まれました。
特に、児童の権利に関する条約の理念については、いわゆる四原則である、「差別の禁止」、「児童の最善の利益」、「生命、生存及び発達に対する権利及び児童の意見の尊重」に相当する内容を規定しており、一歩前進です。
こどもに関する政策の基盤となる基本法を制定し、各府省庁にまたがった「こども政策」に横串を刺す必要があると考え、賛成いたします。
一方で、基本理念に、こどもの養育について、家庭を基本とし、保護者が第一義的責任を有することや、子育てに伴う喜びなど主観的な内容が盛り込まれている点は懸念される事項であり、引き続き、見直しを求めていきます。
我々立憲民主党は、生まれ育った環境や経済的理由に左右されず、誰もが同じスタートラインに立てる社会の実現を目指しています。過度に家庭に責任を負わせるのではなく、社会全体で子供の育ちを支えるという理念の下、これからもチルドレンファーストの政策を進めていくことを申し上げ、討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。